林證寺裏の堤防をよぎる五条川の大蛇
どんな伝承か
昭和十年八月上旬、蒸し暑い日の正午ごろだった。徳重の男が青年会の田の草取りを終えて帰る道すがら、林證寺の裏手にあたる堤防にさしかかる。ふと五条川へ目を落とすと、一升瓶ほどの太さの蛇が頭を大きくもたげ、左右をうかがいながら水に乗って下っていった。男は血の気が失せ、足の裏が地面に貼りついたようになって、その場から動けなくなったという。蛇が三十メートルばかり下流へ遠ざかったころ、ようやく気を取り直した。当時この川の大蛇を見た者は床につくと村では噂されていたが、男はそうならずに済んだと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
西春町史 民俗編2――霊と神・祈禱・怪異(西春町(編)・西春町史)
『西春町史 民俗編2――霊と神・祈禱・怪異』は、西春町が編んだ町史の民俗編である。九之坪・岡・沖村・石橋など町内の各ムラに残る御嶽山や塚、堂、小祠、石塔、家の神、祈禱師、祈願と参詣、霊威と祟り、狐や狸の怪異と憑きものを、聞き書きと『徇行記』や村絵図などの記録から記す。霊と神、祈願と参詣、霊威と怪異の三節に続けて、第十二章の伝説の節を大字ごとの十九項に分けて並べ、五条川の大蛇の目撃談で結ぶ。