麦藁の御神体と麦を作らぬ地帯
どんな伝承か
氏神信仰に付随して、作物や飲食物に対する禁忌が各地に見られる。その一例として、横浜大学の矢木教授が山形県に旅行した際に見聞した話が挙げられている。尾花沢の附近に麦を作らない地帯があった。昔、平氏没落のときにある天皇がこの地に落ちて来て崩じられ、その跡を麦藁で天皇の御体に模した御神体を作って祀ってあるので、麦を作らない、もしその禁を犯すと災いがあるという。ところが同教授が土地の土性を調査すると、極端な酸性反応を呈していた。仮に麦を作ろうとしても十分な生育は期待できず、一枚ほどの畑を石灰で中和して栽培しても、実れば雀が集まって収穫は望めない。麦の栽培が不能なことが逆に信仰に結びついた例だという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の俗信 2――俗信と迷信(文部省迷信調査協議会・日本の俗信・昭和(1949-52))
文部省迷信調査協議会『日本の俗信2―俗信と迷信』(昭和24-27年)。シリーズ第二巻で、迷信の理論的考察と各論を収める。