日が悪いと手当てを遅らせた大商人
どんな伝承か
同じ書の中で、著者は日取りの吉凶が命取りになった例も挙げている。日本橋のある大商人が腸捻転を起こし、猛烈な腹の痛みに襲われた。ところが今日は日が悪いといって医者を呼ばず、日付の変わる午後十二時を過ぎるのをじっと待つ。それから慌てて迎えを出したがすでに手遅れで、手術のかいもなく死んでしまった。著者は臨床の場で、患者やその周囲が抱く迷信のために尊い命が失われる実例を幾度も見せつけられてきたと記し、実害の大小を第三者が勝手に決めて線を引くのは妥当でないと述べる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の俗信 2――俗信と迷信(迷信調査協議会・日本の俗信・1951年(昭和26年))
『日本の俗信 2――俗信と迷信』は、迷信調査協議会が文部省への第二回報告書として編んだ答申書で、まえがきに昭和二十六年十二月の日付がある。迷信の定義や時代性、俗信と生活慣習の区別を委員たちが論じ、食い合わせや守札、憑きもの、河童の名称の分布、迷信による殺人の精神鑑定例などを取り上げる。総論と座談会、各論、結婚・妊娠の迷信の解明、新聞の社説・投書を集めた附録の四章から成る。