蛸が薬師経に変わった蛸薬師
どんな伝承か
京都の京極に蛸薬師と呼ばれる寺がある。その名の由来はこうだ。昔、この寺の僧の年老いた母が病み、蛸が食べたいと言い出した。僧はひどく困りながらも人に頼んで蛸を手に入れ、箱に納めて寺へ運び込んだ。ところが蓋を開けてみると、中に蛸はなく薬師経が入っていたという。そして母の病は癒えた。それ以来ここは蛸薬師と呼ばれる。さらに後の世には、蛸の頭の形から思いついたものか、髪の薄い者がこの薬師に願をかけると効き目があるといわれ、参る人が多いのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の俗信 第3――生活慣習と迷信(迷信調査協議会・日本の俗信・1955年(昭和30年))
『日本の俗信 第3――生活慣習と迷信』は、文部省に設けられた迷信調査協議会が昭和三十年に編んだ調査報告書である。昭和二十四―五年の全国の国民慣習調査をもとに、暦の吉凶、霊魂信仰、民間療法、運勢判断などの迷信・俗信が、地域・年齢・性別・職業によってどの程度信じられているかを分析する。原田種雄・今野圓輔・赤松金芳らが分担した九章からなり、第九章に全国から集めた縁起・言いならわしを禁忌・民間療法・卜占・たたりなどに分けて収める。