物持ちの家に棲み金を運ぶオサキ
どんな伝承か
堀一郎の論文に収められた高橋氏の報告による、群馬県北甘楽郡のおさきの例である。ここではオサキ持ちやオーサキデージンと呼び、比較的裕福な家に多いことをうかがわせる。ある村の家は村で三番目の物持ち、別の村の家も二、三番目といわれた。その家では群れをなして暗い所に棲む小動物を飼っているとされ、金を好むので、急に金持ちになるとオサキがついていると言い出す。よその蚕や米、醤油、味噌が急に減ると、オサキが体いっぱいにつけて運んだのだという。嫌気がさすと家を貧乏にするともいわれ、釜や櫃の縁を杓子で叩くとオサキが出てくると嫌われた。憑かれると発作を起こしてうわ言を口走るという。
原典より
普通は飯をお櫃に入れてその縁を叩くといつか出て来て食べて行くのだといい、一般には釜や櫃の縁を杓子で叩くとオサキが出て来るといつて嫌う。—— 憑きもの持ち迷信――その歴史的考察(改訂版)(速水保孝・1953年(昭和28年)初版・1956年(昭和31年)新版) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
憑きもの持ち迷信――その歴史的考察(改訂版)(速水保孝・1953年(昭和28年)初版・1956年(昭和31年)新版)
『憑きもの持ち迷信――その歴史的考察(改訂版)』は、速水保孝が昭和二十八年に著し、昭和三十一年に書き加えて新版とした研究書である。出雲・隠岐を中心とする山陰の狐持ちなど、家筋に結びつけられた憑きもの迷信を、法務局が扱った人権事件、藩の触書や村の古文書、加茂町の世帯調査から集めている。狐持ちの家に生まれた著者の体験から説き起こし、江戸中期以降の新興地主への反感に起こりを求める。柳田国男が序を寄せている。