広瀬川から竜宮へ行った宮郷村の阿感坊
どんな伝承か
群馬県佐波郡宮郷村の竜宮という集落は海から遠く離れているが、ここにも浦島太郎ならぬ阿感坊という男の竜宮行きが伝わっている。土地の竜宮古伝記によれば、天文十六年、阿感坊は広瀬川の深みに鉈を取り落とし、拾おうと飛びこんだまま竜宮へ行きつき、三年のあいだ乙姫と暮らしたのち、ひょっこり村へ戻ってきた。竜宮のことは決して話すなと禁じられていたのに、取り調べた村役人が、しゃべらねば殺すと責め立てたので、語り終えると同時に息が絶えたという。村には竜宮神社があり、竜宮から持ち帰った玉手箱も残るが、開けば見た者の目がつぶれるとされて今も固く閉ざされ、子孫は斉藤忠太という。
原典より
天文十六(一五四七)年に広瀬川の深い所にナタを落したのを拾いに飛びこんでそのまま三年間、竜宮のお姫さまと同棲生活を送ってヒョッコリと帰村した。—— 日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語)
『日本人物語5――秘められた世界』は、日本人の暮らしの奥にある秘められた信仰や伝承を扱った叢書『日本人物語』の一冊である。境の神や通過儀礼を論じる序論に続き、入らず山や隠れ里、竜宮、平家谷、埋蔵金、生まれ代わり、あの世を見た話、魔法使い、生霊、秘密結社、狐憑きなどを、伝承と昭和三十年代までの新聞記事・見聞を織りまぜて述べる。序論「生活文化の秘密性――はじめに」の後、「奇蹟」「不気味な神々」などの区分の下に短い節を並べる。