人夫の飯びつを空にした毛むくじゃらの大男
どんな伝承か
山形と宮城の境にそびえる御所山の山あいでは、正体の知れない大男が何度か目撃されてきた。尾花沢市鶴子の大類長之助が出会ったのもその一つである。十人ばかりの人夫と車座になって休んでいると、むしろ戸がすっと開き、全身毛むくじゃらの大男が入ってきた。お前は誰だと問いかけても、何も答えない。一人が飯びつから握り飯を投げてやると、大男はむしゃむしゃと食べ、とうとう飯びつを空にして、そのまま立ち去ったという。
原典より
人夫十人ばかりと車座になっているところに、むしろ戸をすーっと開けて毛むくじゃらの大男がはいって来た。—— 日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語)
『日本人物語5――秘められた世界』は、日本人の暮らしの奥にある秘められた信仰や伝承を扱った叢書『日本人物語』の一冊である。境の神や通過儀礼を論じる序論に続き、入らず山や隠れ里、竜宮、平家谷、埋蔵金、生まれ代わり、あの世を見た話、魔法使い、生霊、秘密結社、狐憑きなどを、伝承と昭和三十年代までの新聞記事・見聞を織りまぜて述べる。序論「生活文化の秘密性――はじめに」の後、「奇蹟」「不気味な神々」などの区分の下に短い節を並べる。