西表島の岩穴に住む本物の人魚
どんな伝承か
八重山ではジュゴンをザンと呼び、その肉は琉球国王の不老長寿の薬とされたが、それとは別に、人の姿をした本物の人魚もいると信じられていた。新城島の総代の話では、本当の人魚は西表島の南風見海岸の岩穴に住み、長い黒髪を垂らし、乳房のある人間そっくりの女の姿をしている。人が近づくと子どもを抱いて乳を飲ませながら、ぎょろりとにらみつけるという。なぜ捕まえないのかと尋ねられると、総代は、人魚を捕らえたら七代まで祟られると答えたという。
原典より
どうして捕獲しないのかと南哲氏が質問すると「とんでもない。人魚を捕えたら七代までたたられれます」と答えたという。—— 日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語)
『日本人物語5――秘められた世界』は、日本人の暮らしの奥にある秘められた信仰や伝承を扱った叢書『日本人物語』の一冊である。境の神や通過儀礼を論じる序論に続き、入らず山や隠れ里、竜宮、平家谷、埋蔵金、生まれ代わり、あの世を見た話、魔法使い、生霊、秘密結社、狐憑きなどを、伝承と昭和三十年代までの新聞記事・見聞を織りまぜて述べる。序論「生活文化の秘密性――はじめに」の後、「奇蹟」「不気味な神々」などの区分の下に短い節を並べる。