菜屑が告げた落人と刀を守る蛇
どんな伝承か
ある村の庄屋が谷川のふちを歩いていると、上流から菜を刻んだ切れ端が流れてきた。こんな山奥にも人が住んでいるのかといぶかり、川をさかのぼって探ると、平らな土地に畑が開かれ、身分ありげな侍を上座にすえて家来たちが仕えていた。庄屋はいったん村へ戻り、人を集めて引き返す。すると侍たちは武士らしく死なせてほしいと言い、腹を切って果てた。村人は小屋を焼き払い、大将の刀を持ち帰ったが、その夜、刀のかたわらに一匹の蛇がいるのを見て恐ろしくなり、刀を小屋の跡へ返して祠を建てて祀った。祠は今も残るという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
阿波木頭民俗誌――伝説・妖怪
『阿波木頭民俗誌――伝説・妖怪』は、阿波の木頭地方の民俗誌のうち、「八、伝説・妖怪」の節と、阿波の太布を論じた一篇を収めたものである。前半は北川・折宇・蟬谷などの平家落人の話、平家の皿泉、カマ(滝壺)の大蛇、山爺やアセゴノマン、フルソマ、怪火、狐、隣の槙山村の塚の伝説を、『郡誌』の記事と古老の話から述べる。後半は太布に関する文献を挙げ、祖谷と木頭での聞き書きと製品の調査から原料・製法・道具を記す。