御神体を流した村を呑んだ桜鬼大明神の祟り
どんな伝承か
治暦四年、藤原隆家卿が信濃国の諏訪神社へ勅使として赴くとき当地を通られた。そのとき一人の老翁が忽然と現われ、自分は仲哀天皇の御代からこの地を守護する大山御板神社の荒魂、御板部岡神であると名のり、昔ここに桜鬼という妖鬼がいて良民を苦しめたが今は悔いているので三社を建立してほしいと告げた。隆家は一宇を造営し、桜鬼大明神としてまつった。のち志摩・岸の両村の者が、穢物を持って境内を通って咎めを受けたのを恨み、ひそかに御神体を川に流した。まもなく康安元年六月十八日巳の刻に大地震と大洪水が起こり、日野川の流れが変って両村はことごとく流れ去り、人家は断絶したという。
原典より
治暦四年、藤原隆家卿が信濃国の諏訪神社に勅使として越後路を経て赴かれるとき、当地をとおられた。—— 鯖江市史 史料編 第1巻(民俗編)――伝説(鯖江市(編)・鯖江市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
鯖江市史 史料編 第1巻(民俗編)――伝説(鯖江市(編)・鯖江市史)
『鯖江市史 史料編 第1巻(民俗編)――伝説』は、福井県鯖江市の市史のうち、史料編第一巻の民俗編にあたる巻である。市内の各町に伝わる伝説を、町名を添えて収め、泰澄・親鸞・弁慶にまつわる木や岩、山姥やてんぐ、たたりのある一本杉、地名の由来を記す古文書の写しなどを載せる。自然物・岩石・動物・家屋敷・城跡・道・橋・寺院・塚墓・人物・事件の項に分け、後半には昔話・笑い話・果なし話と田植え唄などの民謡を置く。