重右衛門家の榎と釣瓶餅
どんな伝承か
徳前の重右衛門家の屋敷内に大きな榎(ヨノミ)があり、その枝は十何間も屋敷の外へ突き出て、昼でも下は薄暗い場所だった。夜、村の若い衆がその樹の下を通ると、枝からするすると釣瓶が下りてきて、中に搗きたてのおはぎが入っていた。若い衆は喜んで食べ、味を覚えて毎晩その樹の下に来ては「今夜もカイモチくだんせまあ」とせがむようになった。するとある晩、樹の上から頭の高さに大きな声が響き、「タンベタンベ、オカイモチャ当ろうか、茄子漬け喰てお茶上がれ」と言って、それきり釣瓶は下りなくなったという。樹の下には墓石が二つ並んでいた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
鹿島町史 通史・民俗編――伝説(鹿島町(編)・鹿島町史)
『鹿島町史 通史・民俗編――伝説』は、鹿島町の町史通史・民俗編のうち、昔話と伝説の節と、続く「俗信と俚諺」の冒頭を収めたものである。石動山麓と邑知地溝帯の集落で聞いた話を、芋掘り権兵衛や屁売りじいさなどの昔話、亀塚や椀貸穴などの自然伝説、初瀬の観音様や井田の不動滝の信仰伝説、久江の道閑や村境を決めた話の歴史伝説に分け、在所名を添えて載せる。伝承の状況や語り始めと結びを述べた解説を前に置く。