夢遊病のように林へ歩む良助
どんな伝承か
熱が出ると良助は庭に出たがり、ちょっとした公園ほどもある庭の林を夢遊病者のように歩き回った。下男の源兵は止められても見つからぬよう後をつけていた。ある日、ふらふら歩いていた良助は急にしゃんとした足取りになり、門を出て裏山へ向かった。まるで糸に引かれるように前だけを見て林へ分け入り、ある場所まで来ると立ち止まって何分も動かない。夕闇の迫るなか、源兵は太い樹の陰から寒気を覚えながら見守った。やがて良助は周囲を見回し、呆然とした顔で我に返ると、急ぎ足で家へ戻っていったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
恐怖の事実と悪霊を除く法-本間家の話(中岡俊哉・1976年(昭和51年))
『恐怖の事実と悪霊を除く法-本間家の話』は、中岡俊哉が一九七六年に著した『悪霊があなたを狙う』(双葉社)のうち、まえがきと目次、第一話「“幽霊屋敷”悪霊のたたり」を収めたものである。千葉県館山市上野原の網元本間家で、娘の神隠しを発端に一家が絶えるまでの出来事を、元下男の源兵じいさんが著者に語った聞き書きの形で記す。目次によれば原本は悪霊憑依の実話十一話を二部に分け、終わりに霊魂の存否と悪霊対策を論じる章を置く。