斬られても夢だった金沢の女の遊魂
どんな伝承か
三州奇談に載る金沢の話である。浅井多門が夜更けに友人宅から帰る途中、前を歩く若い女を浮かれ女と思い、からかい半分に手を取ろうとすると、女はおびえて逃げた。ところが家に着くと門前にその女が立っており、雨戸を閉めて締め出しても、いつの間にか縁に上がっている。妖怪と見て抜き打ちに斬ると、悲鳴とともに姿は消えたが手応えはなく、悲鳴は台所のほうから聞こえた。行ってみると、茶の間で働く女が寝ながらおびえて気を失っていた。正気づいた女は、侍に連れられて門を入り斬られた夢を見たと語ったという。
原典より
足音をしのばせて来て見ると、介抱されているのは、まぎれもなく今方自分が斬った女である。—— 日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年))
『日本の妖怪伝説』は、小笠好恵が各地に伝わる奇談・怪談を読み物にまとめた伝説集で、序は昭和四十一年五月付である。浅茅が原の一つ家、四谷怪談、九尾の狐、安達が原の黒塚、道成寺、鍋島の化け猫など、岩手から熊本までの四十五話を、伝えられた形をなるべく崩さずに書き直し、おおむね東から西へ並べる。雨月物語や小泉八雲など書物に拠る話のほか近年の体験談も混じり、一部の話の末にはゆかりの寺社へ行く「順路」を付ける。