蔵での奇行と壁への自傷死
どんな伝承か
終戦の年、学徒動員に出ていた本間家の長男・明が家へ帰って来た。帰って十日目ぐらいのこと、明は急に、何も見えないのに壁や宙を睨みつけておびえるようになった。その日の夕方近く、明は屋敷の裏にある蔵の中へ駆け込んだ。蔵では英男の長女で十七歳のフミが探しものをしていた。明はフミに気づかぬまま、追いかけて来る何かを手で追い払い、叫びながら蔵の中を逃げまわり、片隅に追いつめられた。そして壁に身をすりつけて迫るものを防ごうとしたあげく、壁に頭を打ちつけはじめ、血が流れても止めず、かえって前より強く打ちつけて死んでしまった。一部始終を目の前で見たフミは叫び続け、そのまま発狂した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
恐怖の事実と悪霊を除く法-本間家の話(中岡俊哉・1976年(昭和51年))
『恐怖の事実と悪霊を除く法-本間家の話』は、中岡俊哉が一九七六年に著した『悪霊があなたを狙う』(双葉社)のうち、まえがきと目次、第一話「“幽霊屋敷”悪霊のたたり」を収めたものである。千葉県館山市上野原の網元本間家で、娘の神隠しを発端に一家が絶えるまでの出来事を、元下男の源兵じいさんが著者に語った聞き書きの形で記す。目次によれば原本は悪霊憑依の実話十一話を二部に分け、終わりに霊魂の存否と悪霊対策を論じる章を置く。