田沢湖に通う八郎と赤坂家の大洪水
どんな伝承か
八郎潟の主である八郎太郎は、田沢湖の主の辰子と恋仲になり、八郎潟が凍る冬は田沢湖で暮らすという。そのため田沢湖は冬でも凍らず年々深くなり、八郎潟は浅くなったと伝える。田沢湖の潟尻には辰子を祭る神明堂があり、霜月九日の真夜中に八郎太郎が風雨に乗って湖へやって来る。その水音を聞くと命がないというので、村人はこの日神明堂に集まり酒を飲み歌い騒いだ。昔、西明寺の赤坂吉右衛門の家には毎年霜月に高貴な旅人が宿を乞うた。寝姿を見るなと頼んで入ったが、老婆が覗くと大蛇が大鼾で寝ていた。翌年の大洪水で吉右衛門の家は老婆もろとも押し流された。旅人は八郎であったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第2巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第2巻』は、岩手・宮城・秋田の三県に伝わる伝説を話の型ごとに集めた伝説資料集である。山の争いや沼の主の手紙、巨人の足跡、八郎太郎、ザシキワラシ、河童、掃部長者などの伝説を、口承の聞き書きと近世以降の地誌・縁起から採る。凡例のとおり各項は伝承地を示した例話を冒頭に据え、〔類話〕〔文献〕〔参考〕を続け、柳田・高木による話型名を添えた項もある。