大蛇となって田沢湖の主となった辰子
どんな伝承か
神成沢の三之丞の娘辰子は、その美しさをいつまでも保ちたいと願い、大蔵観音に百日の願をかけた。満願の日のお告げに従って北の山を越えると泉があり、泳いでいた岩魚をすくって食べたとたん、堪えがたい渇きに襲われた。腹ばいのまま水を飲みつづけるうち、娘の体は大蛇へと変わり、地は鳴動して山が崩れ、谷を埋めて大きな湖が生まれる。蛇身となった辰子はその主となった。知らせを受けた母が夜道を急ぎ、松明を掲げて名を呼ぶと、辰子は水底から光を放って姿を見せ、因果を語ってまた沈んだ。母が湖へ投げ捨てた燃えさしには尾びれが生え、これが田沢湖の木の尻鱒になったと伝わる。
原典より
<高木 「赤松ヶ池」>昔、神成沢の三之丞の娘に辰子(神鶴子ともいう)という、まれにみる美しい娘がいた。—— 日本伝説大系 第2巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第2巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第2巻』は、岩手・宮城・秋田の三県に伝わる伝説を話の型ごとに集めた伝説資料集である。山の争いや沼の主の手紙、巨人の足跡、八郎太郎、ザシキワラシ、河童、掃部長者などの伝説を、口承の聞き書きと近世以降の地誌・縁起から採る。凡例のとおり各項は伝承地を示した例話を冒頭に据え、〔類話〕〔文献〕〔参考〕を続け、柳田・高木による話型名を添えた項もある。