千人の湯をまかなった分福茶釜
どんな伝承か
茂林寺の徳の高い和尚が美濃から帰る途中、箱根の峠で休んでいると、守鶴と名のる若い坊主が供をしたいと願い出た。荷を持たせて館林へ連れ帰ると、悟りがよく何事にも忠実に働くので、和尚は自分に福を分けてくれると言って分福と呼んだ。分福は代々の和尚に仕えて幾年経っても老いなかった。ある年、千人の僧が集まる法会で茶の湯番を任されると、どこからか大きな紫金銅の茶釜を持ち出し、千人余りの飲む湯をまかなってみせた。法会が済んだ朝、寝姿を覗かれて大きな狸の正体が知れ、暇を乞うた分福は屋島の合戦と釈迦の説法を幻に見せて姿を消した。あとには蓋のない茶釜だけが残ったという。
原典より
昔々、館林ノ茂林寺ニ高徳ノ和尚が在リマシタ。—— 日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第4巻』は、日本の伝説を話型ごとに集成した叢書『日本伝説大系』の一冊である。茨城・栃木・群馬の三県に伝わる伝説を、男体・赤城の神争いや榛名湖の入水譚、平将門・源義家・親鸞・弘法大師などの事跡、河童・竜宮・長者・石・姥捨・九十九谷などの話型ごとに収める。各項は代表となる伝承地の話を掲げ、〔類話〕に各地の聞き書きを伝承者名や出典とともに並べ、〔文献〕に縁起・地誌などの古記録を抄出し、柳田・高木による話型名を添える。