そば湯の礼に湧かせた宮野の水
どんな伝承か
今の猿ヶ京の仁田山というところに、むかしは人々が住んでいた。その村へ旅の坊さんが来て、ある家の門先で一夜の宿を乞うた。親切な老婆は快く泊め、この村には水がないと言って、そば団子を茹でた湯を出し、これで足を洗ってくださいと勧めた。坊さんは礼を言ってその湯で足を洗い、一晩泊まった。翌朝、坊さんは老婆を水上というところへ連れて行き、杖でそこの石を掘り起こした。すると水がこんこんと湧き出した。昨夜の礼だ、この水で百軒の家が水を飲めると言い残して去ったという。おかげで宮野千軒が栄えた。宮野は猿ヶ京の古名で、この坊さんは弘法大師であったと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第4巻』は、日本の伝説を話型ごとに集成した叢書『日本伝説大系』の一冊である。茨城・栃木・群馬の三県に伝わる伝説を、男体・赤城の神争いや榛名湖の入水譚、平将門・源義家・親鸞・弘法大師などの事跡、河童・竜宮・長者・石・姥捨・九十九谷などの話型ごとに収める。各項は代表となる伝承地の話を掲げ、〔類話〕に各地の聞き書きを伝承者名や出典とともに並べ、〔文献〕に縁起・地誌などの古記録を抄出し、柳田・高木による話型名を添える。