毒と火で猿鬼を射た石衝別王
どんな伝承か
岩窟戸は柳田村字当目の山中、蓮花坊にあり、昔は大きな洞穴だった。洞口を覆う四手の大木の下に老いた鬼が十八鬼の郎党を従えて住み、里から少女をさらい田畑を荒らしたので、村人は猿鬼と呼んで恐れた。猿鬼は初め仁行の猿尾谷に、次いで西山の釜ヶ谷に住み、さらに当目の岩屋堂へ移ったという。驚嶽の猛鷲の害も重なり、垂仁天皇は皇子石衝別王を遣わした。王は普通の手では討てぬと見て草木から毒薬を作らせ、その地を千毒石という。夜半、岩窟の前で火を焚き、現れた猿鬼の両眼を射抜くと猿鬼は逃げ、その地を当目、血の流れた川を黒川、目を洗った所を大箱と呼ぶようになった。村人は王の霊を祭って猿鬼の宮と号したと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第6巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第6巻』は、富山・石川・福井の北陸三県の伝説を集めた伝説集成の一巻である。神々の国争い、弘法大師や義経の遍歴、片目の魚、猿神や化物の退治など、伝承地を示した話を掲げ、県別の類話と古記録の文献記事を添える。巻末に福田晃の解説「主人公にたどる伝承世界」と、県ごとに近世の地誌から市町村史・民話集までを並べた使用資料一覧を置く。