篝火を移され溺れた男と恋路村
どんな伝承か
石川県珠洲郡木郎村、能登国鵜飼庄にあたる地の話。多田の里に女、茂九郎の里に男があって、夜ごと通い合っていた。当時は道も険しく、磯伝いに浅瀬をたどって行くほかなく、月のない夜には女が波打ち際で火を焚いて男を待ったという。ところがもう一人の男が恋敵を恨み、ある夜、女を縛ったうえで篝火の場所を変えて焚いておいた。男はそれと知らずに渡り、磯の深みに沈んで死んだ。女もこれを聞いて嘆き、身を投げて死んだ。それより恋路村の名があるという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説名彙(柳田国男(指導)・日本放送協会(編)/関敬吾・石原美子(編纂)・1949年(昭和24年))
『日本伝説名彙』は、柳田國男の指導のもとに日本放送協会が昭和二十四年に編んだ伝説の名彙である。全国の伝説を、その拠り所となる木・石・岩・橋・清水・淵・塚・坂・屋敷・地蔵などの地物の名ごとに集め、伝わる県郡村名を付して、郡誌・市町村誌や伝説集、民間伝承誌などの出典を括弧で示す。冒頭に柳田の「傳説のこと」を置き、木・石岩・水・塚・坂峠・祠堂の部に分けて、巻末に資料の解説と種類別索引を付す。