麦の葉で摺る信夫文知摺石の石紋
どんな伝承か
むかし、ある百姓が都の勤めに上ったきり、なかなか帰らず音沙汰もなかった。夫の安否を気づかった妻は文を送ろうとしたが、無筆であった。そこでこの石の根もとに立ち、通りすがりの人に書いてもらおうと紙を用意して待っていた。やがて彼女は、心の思いを文にはできないけれど、せめてふる里の石紋を紙に写して送ろうと思いつき、かたわらの麦の葉を取って、紙面が青くなるまで心をこめて石に摺りつけた。都の夫に届けられたこの石紋摺りは、不思議にも文字となって妻の思いを言い尽くしたという。これによって、もじずり石の表を麦の葉で摺れば恋しい人の面影が写ると言われるようになった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第3巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第3巻』所収の「文化叙事伝説」および「自然説明伝説」全65話(山形・福島・新潟)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。