錦木を千束積んで結ばれなかった二人
どんな伝承か
古川という村で錦木塚のありかを尋ねると、稲を刈る女が鎌をさし、大杉の生えた向こうだと教えた。年経た杉の根もとに、ぬるでや桜や楓の紅葉した木々が混じり、土を小高く盛って犬が伏せたような石が据えてある。昔このあたりの赤森の郷には月ごとに市が立ち、隣の里の柴田原に住む老翁が育てたあかほとけという娘が、白鳥の綿毛を混ぜた幅の狭い布を織って市で売っていた。広河原の男が錦木を娘の門口に立てて契りを求めたが、翁が妨げたため錦木は千束積まれたまま朽ちた。男は深い林に入って自ら命を絶ち、娘も思い病んで死んだ。悔いた翁は二人を錦木とともに一つ塚に葬り、その辺に錦木山観音寺を建てたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第2巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第2巻』は、岩手・宮城・秋田の三県に伝わる伝説を話の型ごとに集めた伝説資料集である。山の争いや沼の主の手紙、巨人の足跡、八郎太郎、ザシキワラシ、河童、掃部長者などの伝説を、口承の聞き書きと近世以降の地誌・縁起から採る。凡例のとおり各項は伝承地を示した例話を冒頭に据え、〔類話〕〔文献〕〔参考〕を続け、柳田・高木による話型名を添えた項もある。