二つ目の満月として現れた光体
どんな伝承か
今から二十年近く前の話。著者の実家は秋田県鹿角市にあり、当時早稲田大学に在学していた著者は長い休みごとに帰っていた。夜中の十二時過ぎ、従兄が信じられないものを見たと叫んで玄関に飛び込み、後から現れた父の顔も青ざめていた。二人は盛岡から車で帰る途中、田山の峠で車を止めて放尿していると、正面の満月のほかに、右手の雲間からもう一つ真ん丸い月が現れた。やがて月の輪郭がぼやけ、四つに割れて小さな球になり、一列に並んで金色からオレンジに変わると、四方へ飛散して消えた。翌日の秋田の新聞にはいくつもの目撃記事が載ったという。
原典より
「信じられねえものを見たぞ!」玄関のドアを乱暴に開けて従兄が飛び込んできたのは夜中の十二時過ぎだった。—— 黄昏綺譚(高橋克彦・幽霊・怪異体験・1996年(平成8年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
黄昏綺譚(高橋克彦・幽霊・怪異体験・1996年(平成8年))
『黄昏綺譚』は、高橋克彦が連載をまとめ、一九九六年七月付のあとがきを付したエッセイ集で、吉田光彦の挿絵と組んだ画文集である。著者が体験し見聞きした分身や生霊、寺での怪異、前世、UFOなどの不思議と、史料や神話に残る怪異、宮澤賢治をゴッホの生まれ変わりとみる考えを語る。「この世に幽霊はいる」「不思議な話が史料や神話に」「宮澤賢治はゴッホの生まれ変わり!!!」の三部に分かれ、巻末にあとがきと丸尾末広の解説「黄昏るペン」を収める。