埋め立てられた濠への時間旅行
どんな伝承か
十五年ほど前、東京から盛岡に戻った著者は、書店で本を買って町を歩き、公園の石垣に沿って進むうちに子供の頃の記憶を思い出した。かつて公園の側には深い濠があり、学校の行き帰りに脇を通ったものである。濠は埋め立てられていたはずだが、記憶を頼りに歩くといきなり濠が現れ、三十年近く昔のままの家並みが続いていた。前から来た二人の坊主頭の子供が読んでいたのは『鉄人28号』だった。一年後、小学生時代の友人と訪ね直すと濠はすべて埋め立てられており、あの雑誌が今も連載されているはずがないと気づいて、一瞬過去に旅行したのではないかと寒気に襲われた。
原典より
ジャック・フィニィという作家がいる。—— 黄昏綺譚(高橋克彦・幽霊・怪異体験・1996年(平成8年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
黄昏綺譚(高橋克彦・幽霊・怪異体験・1996年(平成8年))
『黄昏綺譚』は、高橋克彦が連載をまとめ、一九九六年七月付のあとがきを付したエッセイ集で、吉田光彦の挿絵と組んだ画文集である。著者が体験し見聞きした分身や生霊、寺での怪異、前世、UFOなどの不思議と、史料や神話に残る怪異、宮澤賢治をゴッホの生まれ変わりとみる考えを語る。「この世に幽霊はいる」「不思議な話が史料や神話に」「宮澤賢治はゴッホの生まれ変わり!!!」の三部に分かれ、巻末にあとがきと丸尾末広の解説「黄昏るペン」を収める。