柳に抱かれて消えた娘
どんな伝承か
盛岡市の北上川畔の木伏に美しい娘がいた。娘は毎日北上川に出て、川岸の勢いよく伸びた柳の木の下で洗濯物などをするのが常であった。ところがある夜、その娘が不意に見えなくなった。家人も里人も方々を尋ねたが見当たらない。いつも洗濯をしていた柳の木の下へ行ってみると、娘は柳の上幹に密着し、枝々にしっかりと抱きからまれて気を失っていた。人々が大騒ぎをして幹から放すと、娘はしばらく茫然としていたが、やっと気がついて、ある夕方どこからか見知らぬ美男が来て強く体を抱きしめて離さなかった、その中に夢中になってあとは何も知らぬと語った。それからその柳は故なく枯死したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。