三十三間堂の棟木となった柳の精
どんな伝承か
高柳という所の深山に大きな柳の木があった。京都に三十三間堂を建てるのに棟木がなく、この柳なら一本で足りるというので献上させることになった。柳のもとで枯枝を拾って暮らしていたおりゅうという娘は柳の精の子を身ごもっており、木が切られると聞いて嘆いた。木挽が何十人がかりで切っても、翌朝には切口がふさがっている。山じゅうの木が神木である柳を見舞い、木屑を切口に貼りつけていたのである。ところが柳が、見舞いに来たへくそかずらを、お前のようなものが来るほど落ちぶれてはいない、と侮った。腹を立てたかずらは棟梁に夢見せをして、切屑を焼けば倒れると教えた。そのとおりにすると柳は倒れ、同時におりゅうも死んだ。「あなずるかずらにけつまずく」の言葉はここから出たという。倒した木は動かず、六つになった男の子に衣装を着せて木の上で采配を振らせると動いたといい、その時の音頭が壇尻の屋台を引く音頭の始まりだと伝える。
原典より
〈柳田―「三十三間堂の柳」〉高柳いう所にその、大きな山に深山にねえ、大きな柳の木があったんですわなあ。—— 日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。