死の刻に寺を訪れた削岩師の影
どんな伝承か
生野鉱山の削岩師だった大明寺の檀家が、事故で入院した病院で息を引き取った夜のことである。同じ時刻、寺で飼っている犬がしきりに吠え出し、誰かが庫裏の戸をトントンと叩いた。住職の妻が起きて戸を開けても誰もおらず、本堂の方へすっと向かう人影が見え、犬がそれを追っていった。その後ろ姿は入院しているはずのその人にそっくりだったといい、ちょうどその時刻に病院で亡くなっていたことが後で判明したという。
原典より
「おかしいな」と、家内が濃い闇をすかしてみると、その人影が犬に追われて、墓場のほうへ消えていきました。—— 現代の怪奇-日本列島のミステリー地帯(鈴江淳也・1970年(昭和45年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の怪奇-日本列島のミステリー地帯(鈴江淳也・1970年(昭和45年))
『現代の怪奇――日本列島のミステリー地帯』は、鈴江淳也が前著『日本の奇談』に続けてまとめた、現代の超常現象と奇談のレポートである。桑名の「天狗の初さん」、新幹線の亡霊、京都のタクシーに乗る幽霊客、人魂、原因の知れない奇病、念写と三田光一の透視などを、著者の取材・面談と、大正の新聞から昭和四十年代の週刊誌までの記事で集めて収める。五つの部に分け、あとがきは昭和四十五年三月の日付で、巻末に機関誌などを入手できる団体・研究家の一覧を付す。