越後弁で御免なさいと呼ぶ声
どんな伝承か
大正八年十二月、盛岡のS夫人の例である。越後柏崎町に住む知人K夫人の突然の死去を告げる電報は、四日午後一時発の日付で同じ夜の七時に届いた。あまりに突然で人違いではないかと夫人は思った。同じ日の朝、夫人は鼠が廊下を騒ぐ音で目を覚まし、子息の部屋と仏壇のある部屋の中間あたりで『御免なさい』という女の声を二声聞き、下女を起こして誰か訪れていると言った。硝子戸越しに庭を窺っても夜はまだ暗く誰もいない。時計は午前四時少し前だった。それは越後弁の声で、盛岡弁なら『御頼み申します』と言うところだという。後の手紙では、K夫人は三日夕刻に発病し一時間ほどで息を引き取っていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊学講義(変態心理学講義録)(小熊虎之助(述)・日本変態心理学会・心霊学・変態心理学)
『心霊学講義(変態心理学講義録)』は、文学士小熊虎之助が述べ、日本変態心理学会が講義録として出した心霊学の講義である。精神感応、交霊、透視と未来の予知、心霊物理現象、騒ぐ幽霊などを、英国の心霊研究の調査例や講者が盛岡で確かめた事例を引きながら、詐術や錯誤を見分ける心理学の立場から論じる。全十章で、こっくりさんなどの自働現象の説明に始まり、終章で長尾夫人や三田光一の念写実験を検討し、巻末に内外の参考書解説を付す。