漂流の果てに見た波浮の港
どんな伝承か
一九九一年十二月、グアム島へ向かう外洋ヨットレース中に転覆・漂流した「たか号」の乗組員たちは、十日ほどで幻覚を見はじめた。衰弱の進んだ者から順に死に、佐野三治はひとりになった。やがて佐野自身も幻聴幻影を見るようになり、子供が岸壁で遊ぶ声を聞いて港に着いたと思い、ラフトの入口を開けると海しかない、という体験を何度も繰り返した。一度は港に上陸して医者の家の扉を叩く幻覚も見ており、その港は大島の波浮の港だったという。大漁旗の漁船が近づく幻も繰り返し現れた。彼は二十七日後に貨物船に救助された。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
証言・臨死体験(立花隆・臨死体験・ノンフィクション・1996年(平成8年))
『証言・臨死体験』は、立花隆が文藝春秋の雑誌『クレア』に連載し、一九九六年に単行本として刊行した臨死体験の証言集である。俳優の安田伸、作家の水上勉、彗星探索家の木内鶴彦、プロレスラーの大仁田厚、映画監督の羽仁進など、病気や事故で死の淵に臨んだ二十三人の体験を、本人や家族からの聞き取りで記録する。各章は人物の略歴と前置きに続けて問答形式の談話を載せ、本人の著書や手記からの引用も交える。