仏壇に納められた蠟人形の首
どんな伝承か
著者が若い頃、盛岡の町に名高い名曲喫茶があり、壁にはベートーベンらのデスマスクが飾られていた。ある日、客のいない午後に本を読んでいると急に怖くなり、死体に囲まれているのだと気づいて店を飛び出したという。後年、著者はある編集者から実話を聞かされた。編集者が何十年ぶりかで中学時代を過ごした町を訪ね、二十歳前後で事故死した友人の実家で焼香を望むと、両親は「あの子に会ってやってください」と仏壇を開けた。中には笑っている親友の首が納められていた。よく見ると学生時代の写真を元に作られた原寸大の精巧な蠟人形で、口元には産毛まで生えていた。
原典より
今はもう潰れてしまったが、私の若い頃、盛岡の町に名高い名曲喫茶があった。—— 黄昏綺譚(高橋克彦・幽霊・怪異体験・1996年(平成8年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
黄昏綺譚(高橋克彦・幽霊・怪異体験・1996年(平成8年))
『黄昏綺譚』は、高橋克彦が連載をまとめ、一九九六年七月付のあとがきを付したエッセイ集で、吉田光彦の挿絵と組んだ画文集である。著者が体験し見聞きした分身や生霊、寺での怪異、前世、UFOなどの不思議と、史料や神話に残る怪異、宮澤賢治をゴッホの生まれ変わりとみる考えを語る。「この世に幽霊はいる」「不思議な話が史料や神話に」「宮澤賢治はゴッホの生まれ変わり!!!」の三部に分かれ、巻末にあとがきと丸尾末広の解説「黄昏るペン」を収める。