ヒキ目の術で射られた能登島の猿鬼
どんな伝承か
別所と向田の境にある茂った森に、姿は猿で頭に角が一本生えた猿鬼という怪物が住み、村々の家畜を襲って食い、ついには村人までさらった。村人が神明宮に祈ると、天子が左大将義直というヒキ目の術の名人を遣わすとの告げがあり、神主が都へ願い出ると告げのとおりになった。義直は能登島へ上陸すると神明山の頂に神壇を構えて祈願し、強弓に鏑矢をつがえて猿鬼の森へ放った。たちまち黒雲が空を覆い、雷が鳴って大地が震えた。森から追い出された猿鬼にもう一矢を放つとのど笛を貫き、浜辺へ逃げるところを追いつめ、剣でとどめを刺したという。村には再び平和が戻ったと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第6巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第6巻』は、富山・石川・福井の北陸三県の伝説を集めた伝説集成の一巻である。神々の国争い、弘法大師や義経の遍歴、片目の魚、猿神や化物の退治など、伝承地を示した話を掲げ、県別の類話と古記録の文献記事を添える。巻末に福田晃の解説「主人公にたどる伝承世界」と、県ごとに近世の地誌から市町村史・民話集までを並べた使用資料一覧を置く。