菅笠を着せた侍女と笠寺の縁起
どんな伝承か
本尊は十一面観音、開基の善光上人の作で長さ六尺という。境内には薬師堂・護摩堂・地蔵堂・祖師堂・多宝塔と鎮守の白山祠があり、池の中には弁天祠がある。寺記によれば、聖武天皇の御代に善光上人が霊木を得て、熱田明神の神勅により本尊を刻み、初めは小松寺と号する勅願所であった。のちに兵火で諸堂が滅び、霊像だけが野に残されて道端に立った。鳴海の長者の侍女が幾月も通って拝み、村雨で像が濡れたのを悲しんで自らの菅笠を着せる。都から東へ下る中将兼平がその女を見初めて都へ伴い、女はやがて御簾中となった。のちこの地に伽藍を営んで尊像を安置したのが延長八年のことで、本尊が笠をかぶるゆえに世に笠寺と呼ぶという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。