六所社の森に響く天狗の太鼓
どんな伝承か
六所社の森は、義経が鎧を掛けて休んだと語られる古い休み場で、鳴海や星崎で採れた塩を運ぶ塩付街道の道筋にあたる。森の竹藪の中には六畳ほどの砂地があり、村人はそこを天狗の相撲場、天狗の子の遊び場と呼んだ。ただし相撲を見た者も、天狗を見た者もいない。森のすぐそばの池には天狗がいて、泳ぐ者の足を引いて底へ沈めたといい、溺れた者は火の玉となって夜ごと川の魚を捕って食べたと伝わる。秋から冬の真夜中には森から太鼓の音が響き、若者が駆けつけると音はやみ、家に戻るとまた鳴った。戦後はぱたりと絶えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。