大日山で天狗と論じ裂かれた神官
どんな伝承か
今からおよそ百五十年前、江戸の末のことという。佐久島の八剣宮に長太夫という神官がいて、毎夜のように島の西部にある大日山へ出かけ、天狗と議論を戦わせていた。ある夜、激しい論のはてに天狗に体を引き裂かれて死んでしまった。ふだんは必ず神官の装束をまとい笏を手にして出かけたが、殺された夜に限って寝衣のまま、笏も持たずに行ったので負けたのだと語り伝えられている。翌朝その死体を見つけた島の人々は、あまりに無残な姿に恐れおののいたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。