谷を流れる一尺余りの花弁
どんな伝承か
『静岡県名勝案内』が記す。京丸山の奥深くに、家数のわずか数軒に過ぎない集落がある。古くは他所との行き来を絶ち、長を源佐衛門尉と称して、家には金巾子の冠、緋縅の鎧、錦の直垂などを秘蔵していた。往昔、京家の内乱を避けて遠くこの山中に隠れ住んだ者の末裔だと伝える。またこのあたりの深い谷には奇異な花があり、遠くから望むと形が牡丹に似ている。まれに落ちた花が渓流を流れてくるのを見ると、一弁の大きさが一尺余りに及ぶ。これを京丸の牡丹と呼ぶのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。