来日口を開いた五社明神と大蛇
どんな伝承か
大昔、豊岡付近一面の平野はまだ泥海で、黄沼、前沼といっていた。人々が住む土地もなく悪いけものに困っている様子を見た五社明神の五柱の神は、出石の床尾山に登って泥海を見渡し、来日口に横たわる大きな岩を切り開いて泥水を日本海へ流し出した。ところが泥海の主の大蛇が現れて来日口をふさぎ、追い払っても何度も戻ってくる。神々はついに大蛇を岸へ引きずり上げ、頭と尾の両方から引いて胴を真二つに引きちぎった。泥水は流れ去り、泥海は立派な土地になったという。その日が八月朔日であったので、八朔には藁で大蛇の形の綱をつくり、村の者が頭と尾の二手に分かれて引きちぎる行事を行った。切れない年は大水が出るといわれた。
原典より
〈高木——「穴切神社蹴裂明神」 柳田——「蹴裂の宮」〉大昔のことです。—— 日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。