蛇杭を打たれて谷を下った大蛇
どんな伝承か
昔、岩崎村の奥の山の上に大きなくぼ地があり、大雨のときには池になって大蛇が住むといわれた。その大蛇が村の老人の夢枕に立ち、この池から出たいと言った。人々は気味悪がって池の出口に蛇杭を打つことにし、出石郡暮坂に住む蛇好きな男に援助を求めた。その夜、大蛇はふたたび老人の夢に現れて蛇杭を打たぬよう頼んだが、暮坂の男が承知したので村人は出口に杭をぎっしり打ち込んだ。大蛇は大いに怒って雨や風を呼び、岩崎の谷は夜通し鳴り、雨は滝のように家々と田畑を襲った。夜半すぎ、谷の奥から起こった鈍い地鳴りが戸障子を揺るがせて走り去った。翌朝には谷筋が一面の泥の海となり大岩が転がり、穂の出そろった稲は埋もれ、大蛇の池は跡形もなかった。大蛇は大水の勢いに乗って池の囲いを破り、谷を下っていったのである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。