井根の底に沈められた千切り売りの娘
どんな伝承か
六人部を流れる土師川には七つの井根があった。二百数十年前のある年、梅雨前の大雨で井根が崩れ、田植えを控えた百姓たちは飢えを恐れて自力の復旧に追われた。ある井根だけが繰り返し切れるのは水神の祟りだとして伺いを立てると、未婚の娘を人柱に供えよとの託宣があった。志願する者のないところへ、竹田から千切りを売りに来た身寄りのない娘が通りかかり、村役たちの願いを受け入れた。娘は尼から授かった経文入りの経帷子をまとい、目隠しをされて柱に縛られ、井根の深みへ沈められた。井根は百年崩れぬ堅固なものになったが、盆の夜に白衣の幽霊が川面を歩む姿が見られ、庄屋が川施餓鬼を営むと噂は絶えたという。
原典より
〈高木―「順礼樋管」〉六人部地区を流れる土師川には、七つの井根があります。—— 日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。