井根を支えた巡礼の人柱と地蔵
どんな伝承か
内田から東堀を経て土師川に至る一帯は、かつて広い泥沼であった。江戸期に松平忠房が沼を埋めて田に変えたものの、肝心の水がない。そこで土師川に井根を築いて水を引くことになったが、石堤は増水のたびに流されて完成しなかった。堀村の人々は人柱を立てるほかないと考えたが、名乗り出る者はいない。折しも川原には親子四人の巡礼が暮らしており、病身であった父親が自ら人柱に立ちたいと申し出た。その巡礼を人柱にしてからは石積みが順調に進み、井根は完成する。村人は感謝して取入口の脇に地蔵を祀り、霊を弔ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。