春来峠の池の竜と菖蒲綱
どんな伝承か
昔、春来峠の登り口に、大樹が並び昼でも暗い森に囲まれた大きな池があった。この池には竜が住んでいるという噂が広がって、誰も近づかなかった。ある年の夏、通りかかった旅人がその竜を見て、恐ろしさのあまり村へ降りてそのまま死んでしまった。そんなことが度々起こった。たまたま通りかかった一人の坊さんに教わり、村人はたくさんの艾と針を人形に詰め込んで池へ運んだ。竜が現れたとき人形に火をつけると、竜は燃える人形をそのまま呑み込んだ。腹で艾が燃え、針に刺された竜はやがて沈んでいった。村人は喜んだが束の間で、村には次々と災いがあり人が死んだ。竜の祟りだということになり、池のほとりに竜神を祀ったという。このために男の子の節供には長い長い菖蒲綱を作る。池の跡も田になっているが大変深く、ここに住むどじょうには耳があると言い伝えられている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。