鐘尾のガイダ婆と錫杖の石突
どんな伝承か
鐘尾の仁王山の畑で草を取っていた百姓が、藪の中で小牛ほどもある狼が人骨を喉に詰めて苦しんでいるのを見つけ、力任せに抜いてやった。ある晩、若い女が来て泊まり、やがて夫婦になって子も生まれ、家は次第に豊かになった。ただ、産んだ翌日には平気で外で働き、夜になると固い物を食べている様子であった。折しも大峰帰りの修行者阿難が国境の蒲生峠で野宿すると狼に囲まれ、木に登ったが狼は肩を重ねて迫る。あと少し届かず、鐘尾のガイダ婆を呼んで来いとなった。婆が加わって最後の狼が足に食いつこうとしたとき、振れた錫杖の石突が喉を貫いた。翌朝、血をたどって鐘尾の家を訪ね祈祷すると、裏戸を破って狼が山へ消えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。