炒り豆の鍋で正体を見せた蛇の聟
どんな伝承か
年頃の美しい娘のもとへ、毎夜どこからか名も知れぬ美男が通ってきた。様子がおかしいと案じた両親に言われ、娘は豆を炒っていた鍋を男に任せて裏へ立ち、障子の破れ目からのぞくと、男は蛇の姿に戻ってとぐろを巻き、尾で鍋の豆をかき回していた。母の勧めで次の晩に黍団子を食べさせると、男は急に腹が痛いと言って泊まらずに帰った。翌朝、父が地面ののたうった跡をたどると、裏のマダノ木の株の穴で大蛇が苦しんでおり、父はそれを鎌で切り刻んで殺した。それからは美男が通って来ることはなくなったという。
原典より
さうして裏口の障子の破穴から覗いて見て居ると、其美男は一疋の蛇になって、くるくるにからまつて尾で鍋の中の豆をがらがらと掻き廻してゐた。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。