蛇聟を退治した清水蟹の恩返し
どんな伝承か
語り手が明治五年生まれの祖母から昭和の初めによく聞いた話。人のよい父親が田回りに出ると、畔に清水蟹が穴を掘っていた。よその田に水が漏れれば踏み潰されると案じ、山へ持って行って放してやった。帰り道、蛇が蛙を呑もうとしているのを見て、放してやれ、代わりに三人いる娘のうち一人をやると頼んでしまう。三晩目、末娘が親のためだと白装束で待つと、蛇は大蛇の姿で現れた。そこへ山から蟹の群れが押し寄せ、蛇に乗ってはさみ殺してしまった。娘は蛇のもとへ行こうとした身だからと旅に出ることにし、蛙が持って来た着物を着て旅立った。親孝行は自分に返ってくるのだという。
原典より
「お婆さんお婆さん、話してよ」「なにが、いいかナア」「しみずがにの話してくんせ」明治五年生まれの祖母に、昭和の初め頃、よく聞いた話です。—— 市川の伝承民話 第1集(市川民話の会・市川の伝承民話・1980年(昭和55年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
市川の伝承民話 第1集(市川民話の会・市川の伝承民話・1980年(昭和55年))
『市川の伝承民話 第1集』は、市川民話の会が昭和五十五年に編んだ民話の資料集である。市川市教育委員会の事業として昭和五十四年度に千葉県市川市の国分・北国分・行徳・南行徳で行った採訪調査のうち、テープ起こしを終えた語りを、方言も残して話者の息継ぎのままに記録している。世間話・伝説・昔話・唄・生活譚の五部に分けて地区別に並べ、話末に話者・地区・記録者の名を添える。