難産の狐を助けた老医の小判
どんな伝承か
明治の中期、飯野川に名医がおり、ある夜中、使いの者が表戸を叩き、産婦が難産で苦しんでいるからすぐ来てほしいという。医薬や医療器を持たせて出かけると、山ノ手の沢の奥に岩や樹木に囲まれた別荘風の邸宅があり、産室に通された。手当てののち、ようやく双生児を取り上げたが、医師には産婦が異類の者であることが分かっていた。それでも情け深い老医は手当てを終え、年老いた両親の礼と夜食の馳走を受け、包み金をもらって帰宅した。開けてみると、それはまぎれもない小判一枚であった。翌日、若者を前夜の場所とおぼしい所へやると、そこは人里から離れた沢の奥で家などはなく、岩の横穴が一つあるだけだったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
宮城県史 民俗編(茂木徳郎(「妖怪 幽霊」の章)・宮城県史シリーズ)
『宮城県史 民俗編』は宮城県の県史の民俗編で、ここに収めるのは茂木徳郎が執筆した章「妖怪 幽霊」である。山・道・木・水・海・雪・家など出現の場所による分類に沿って妖怪変化を論じ、幽霊とヒトダマ・死霊・生霊の観念を考えたうえで、県内の妖怪・幽霊・動物変化の伝承を郡・町村名を添えて集める。序説・本論・事例篇・参考の順に並び、序説では昭和二十四年の迷信調査と昭和三十年のNHK仙台中央放送局の調査にも触れる。