鮭の大助に送られた羽織の主人
どんな伝承か
陸前気仙郡竹駒村、いまの陸前高田市にあたる土地の、羽織という旧家に伝わる話。この家は多くの牛を飼っていたが、毎年どこからともなく巨鷲が飛んで来て牛をさらっていく。主人が自ら牛の皮を被って待ち構えたところ、刺す間もなく鷲に掴み去られ、遠く玄海灘の孤島の老杉の枝に置き去りにされた。困っているところへ老人が現れ、「我は鮭の化身で、大助という一族の長じゃ」と名乗り、毎年十月二十日に仲間が気仙の今泉川へ入って産卵する縁で送ろうと言って、背に乗せ故郷へ帰した。以来その家では十月二十日に当主が川口で神酒を供え、鮭を口にしなかったという。
原典より
羽織という旧家に伝わる伝説で、この家の祖先は平家の落人とも、または他国から落ちのびた武士であったともいわれる。—— 宮城県史 民俗編(茂木徳郎(「妖怪 幽霊」の章)・宮城県史シリーズ) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
宮城県史 民俗編(茂木徳郎(「妖怪 幽霊」の章)・宮城県史シリーズ)
『宮城県史 民俗編』は宮城県の県史の民俗編で、ここに収めるのは茂木徳郎が執筆した章「妖怪 幽霊」である。山・道・木・水・海・雪・家など出現の場所による分類に沿って妖怪変化を論じ、幽霊とヒトダマ・死霊・生霊の観念を考えたうえで、県内の妖怪・幽霊・動物変化の伝承を郡・町村名を添えて集める。序説・本論・事例篇・参考の順に並び、序説では昭和二十四年の迷信調査と昭和三十年のNHK仙台中央放送局の調査にも触れる。