黄滝と七金山に残る役行者の行道跡
どんな伝承か
『東大寺文書』永治二年五月の「西蓮勧進文案」である。勧進の比丘西蓮が、梵鐘や湯釜の助成を十方の施主に請うた書状で、東海道伊賀国名張郡の南山に仙滝があり、世に黄滝と呼ぶ霊験無双の地だと記す。古く役優婆塞がここで長く座禅を積み、その行道の跡は今も残って七金山と呼ばれ、霊石の隙には如法経と閼伽器が納められているという。その後は住持する人もなく年を経たが、承保のころ、智行を兼ね備えた金剛仏子正縁聖人が不動明王の正体を拝そうと願を起こし、金峰山・熊野山・長谷寺の三箇所で三年の修行を重ねたところ、三所権現と二人の童子が示現して、その正体は伊賀国名張郡南方の黄生滝にあると告げたと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。