雁の仇に涙した狩人と雁卒都婆
どんな伝承か
河内国名所鑑は、中野村の領内に雁卒都婆と呼ぶ石の卒塔婆があると記す。いつの頃のことか、狩人がこの場所で雌雄の雁を見て一羽を射たところ、その雁には首がなかった。あたりを探しても落ちた首は見つからず、狩人はひどく不審に思う。翌年、同じ場所に雁が一羽来たので射落とすと、首は地に落ち、さらに翼の下からもう一つの雁の首が落ちてきた。射た場所も月日も去年と同じであったから、この鳥は去年射落とされた雁の仇を知って来たのかと哀れを催した。去年の首が見えなかったわけも思い当たり、いよいよ袂を絞った狩人は帰る気も失せて道心を起こし出家した。そしてこの地に卒塔婆を立て鳥の印としたので雁卒都婆と呼ぶという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。