七本の足を切られた蛸と婆の岩
どんな伝承か
長松という白砂の浜があり、その突端の大岩は満潮には隠れ、干潮には大きな姿を現す。島の人はこれを婆の岩と呼ぶ。いつのころか瀬井の里に老婆が住んでいた。夏のきびしい日照りが続いて食うにも事欠き、島のならわしどおり魚貝を漁って暮らしを繋いでいた。ある日、老婆が浜の突端で休んでいると、干上がった大岩の根の窪みに、頭が五升樽ほどもある大蛸が寝そべっていた。老婆は毎日包丁を持って通い、七日のあいだに七本の足を切って持ち帰った。八日目、最後の一本を切ろうとしたとたん、大蛸はその足で老婆を巻き取り海へ沈んだ。二、三日して婆さんの着物だけが岩の上に乗せてあったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第10巻』所収の「文化叙事伝説」および「自然説明伝説」全85話(岡山・広島・山口=中国地方)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。