牛が運び去った寺和田の温泉跡
どんな伝承か
苫田郡鏡野町寺和田に「温泉跡」と呼ばれるところがある。昔、この土地に湧いていた温泉を、牛に負わせて真賀温泉へ移していったと伝えられる。伝承者は西村里美。親条にあたる広島県大和町の産斉水では、赤ん坊の産湯に使う湯の湧く小井戸に老婆が襁褓を投げ込んだために湯が出なくなったと語られており、湯が土地を去って別の場所へ移るという同型の伝えが中国地方に広く分布していることを示す一話である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。