天狗の羽交いを射た戸立てずの庄屋
どんな伝承か
正木の庄屋に介之丞という弓の名手がいた。稽古のさまを天狗が悪しざまに言うので、介之丞は矢を放って左の羽交いを射落としてしまう。天狗は詫びを入れ、この家に盗難を起こさせないと誓って羽交いを返してもらった。以来、この屋敷へ忍び込んだ盗人は手足が痺れて動けなくなり、戸を開け放しておいても物が失せない。人はこれを戸立てずの庄屋と呼んだ。敷居をまたいでその一部を削り取り、おとさの権現へ参れば盗難を免れるといい、削る者のために今も敷居のそばに斧が置かれている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第12巻』は、四国四県(香川・愛媛・徳島・高知)の伝説を話型ごとに集めた伝説集成の一巻である。神々の争いや大人の足跡、弘法大師の彫り残しや麦の種、英雄の誕生、長者、人柱、蛇聟、狼の報恩、化猫退治、首切れ馬、夜泣石、地蔵の霊験などを、町村誌や地方の伝説集、昭和五十三年度立命館大学説話文学研究会の採集調査稿から採る。百三十九話に通し番号を付け、各話に伝承地と出典、高木・柳田の分類名を添え、県別の〔類話〕と〔文献〕を続ける。